かたかんせつだっきゅう

肩関節脱臼

監修:

概要

肩関節脱臼は、外傷などによって上腕骨の関節(上腕骨頭)がずれてしまった状態です。

肩関節は、球状の上腕骨頭とその受け皿となる肩甲骨のくぼみ(肩甲骨関節窩)によって成り立ちますが、この上腕骨頭の大きさに対して肩甲骨関節窩は小さく、可動域が大きい一方で不安定であるという特徴があります。そのため、肩関節は関節部分を覆う靱帯(じんたい)や関節包(関節を包む袋)、周囲の筋肉などの軟部組織が大きな範囲を占め、これら組織によって支えられています。

しかし、肩関節周囲の軟部組織が損傷を受けると、上腕骨頭がずれて脱臼を起こすことがあります。肩関節脱臼は、肩関節がずれる方向によって前方脱臼、後方脱臼、下方脱臼に分けられ、このうちもっとも多くみられるのは前方脱臼です。前方脱臼では上腕骨頭が前方向にずれ、上腕骨や肩甲骨関節窩の骨折などを伴うこともあります。

初回の肩関節脱臼の発症年齢が低いほど再発率が高いとされ、10歳代では全体の8〜9割に再発がみられる一方、40歳代以降ではほとんど再発はみられません。なお、肩関節脱臼を繰り返す状態を反復性肩関節脱臼といいます。

肩関節脱臼を起こした際は関節を整復した後、3~4週間程度固定しておくことが一般的です。また、反復性肩関節脱臼の場合には外科的手術が必要なケースもあります。

原因

肩関節脱臼は、主に外傷によって肩関節周囲の軟部組織や肩甲骨関節窩の辺縁を覆う組織(関節唇)が損傷することで発症します。

アメリカンフットボールやラグビー、柔道などのコンタクトスポーツ時の外傷によって生じることが多く、脱臼の回数が増えるごとにちょっとした外力でも発症しやすくなります。肩関節脱臼を繰り返す状態を反復性肩関節脱臼と呼び、ときに寝返りなど日常の軽微な動きでも脱臼を起こすことがあります。

症状

肩関節脱臼を起こすと、肩関節に強い痛みを感じて腕に力が入らなくなります。

運動障害や感覚障害を伴うこともあり、肩関節脱臼のうちもっとも発症頻度の高い前方脱臼では、腕神経叢損傷や腋窩神経損傷(えきかしんけいそんしょう)などの神経損傷、また大結節骨折や肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)などを合併することもあります。

反復性肩関節脱臼では、外傷時でなくても肩関節を外側に開くように動かしたり回転させたりすることで、脱臼を起こしそうな不安感や痛みを感じることがあります。

検査・診断

肩関節脱臼が疑われる場合にはX線検査が行われます。X線検査では、脱臼に加え周囲の骨折の有無も確認します。反復性肩関節脱臼の場合には、さらにMRI検査やCT検査を行い、上腕骨や肩甲骨関節窩の骨折の有無や、関節唇の損傷の程度などを調べることもあります。

治療

肩関節脱臼の治療では、脱臼を戻すために整復が行われます。整復の方法には、腕を上に挙げて引っ張るなどさまざまなやり方がありますが、無理に戻そうとすると骨折することもあるので、速やかに整形外科を受診することが大切です。肩関節の整復後は、3~4週間程度固定しておくのが一般的です。

整復を行っても日常生活やスポーツによって脱臼を繰り返したり、それによって活動が制限されたりするような場合には外科的手術が考慮されます。

手術には、軟部組織を正しい位置に縫い付ける方法や、軟部組織を骨や腱で補強する方法などがあります。関節の状態によっては骨移植が必要になるケースもあります。

術後は筋肉や関節のリハビリテーションが行われるほか、再発を予防するため3か月程度は手を後ろについて起き上がるなど一部の動作が制限されます。柔道やアメリカンフットボール、ラグビーなどのコンタクトスポーツへの復帰までには、6か月程度の休息が必要です。

予防

肩関節脱臼を予防するためには、肩関節を過度に外側に開いたり回転させたりしないことが重要です。

肩関節を外側に開いたり回転させたりすることは脱臼を誘発する原因になります。このような動作に伴う脱臼の予防法としては、テーピングでの固定や脱臼予防装具の装着などが挙げられます。

最終更新日:
2025年06月03日
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2025/06/03
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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