
咽頭がんは空気や飲食物の通り道である“咽頭”にできるがんです。咽頭の部位によって上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分けられます。“咽頭がん”とひとくくりに言っても、がんができる部位によって発症率や生存率、治療方法が大きく異なることが特徴です。
本記事では、咽頭がんの生存率から治療法について詳しく解説します。
まず、咽頭がんの発症率や、その特徴を理解することが大切です。
咽頭がんの発症率は部位によって異なります。国内で1年間に咽頭がんと診断される人の数は、上咽頭がんで約800人、中咽頭がんで約1,800人、下咽頭がんで約1,900人です。日本人で頻度が高い胃がんの患者数が年間約135,000人であることと比べると、そこまでありふれたがんではないといえるでしょう。
男女比で見ると、いずれの部位も男性が女性よりも発症頻度が高い傾向にあります。好発年齢は50代~60代ですが、上咽頭がんや中咽頭がんでは比較的若い世代にも発症するといわれています。
では、咽頭がんの生存率はどうでしょうか。
がん治療の予後を示す指標の1つに“5年生存率”があります。これは、がんと診断された人が5年後に生存している割合を示したもので、治療の効果を確認するためなどに使われます。咽頭がんの5年生存率は部位や病期(ステージ)、治療、年齢別などで分けるなど、集計方法によっても異なりますが、全国がんセンター協議会が公表している2007〜2009年に診断を受けた患者のデータは以下のとおりです。
なお、本データの対象は手術を受けた患者だけではなく、放射線治療や薬物療法など何らかの治療を受けた患者が対象で集計したものです。
咽頭がんの治療は、大きく分けて“手術”“放射線療法”“薬物療法”の3つがあります。
咽頭がんの部位や大きさ、患者の体力や希望などを総合的に評価して、どの治療を行うかを判断します。場合によっては、複数の治療を組み合わせる“併用療法”を行うこともあります。
がんを切除する治療です。中咽頭がんと下咽頭がんで行われることがありますが、上咽頭がんは手術が難しい部位なため、ほとんど行われません。
咽頭周辺は食事や発声などに関わる重要な機能が集まっているため、可能な限りこれらの機能を残せるように、医師と患者が相談しながら手術の方法を決定します。しかし、切除によって生じた欠損が大きいと、そのまま傷を縫合することが難しい場合があります。この場合は、体内の別の組織を移植して切除した部分を再建する“再建手術”を行い、可能な限り食事や発声などの機能低下を最小限で済むように工夫します。
体の表面から放射線をがんに照射し、がんを消滅させたり小さくしたりする治療です。発声や飲み込みなど、喉の機能が残せるので、機能の温存を希望する場合やがんの大きさが小さい場合に選択されることがあります。
また、咽頭がんの放射線療法は抗がん剤を併用することで治療効果が高くなることがあります(化学放射線療法)。しかし、一般的に副作用も強く出ることがあるため、患者の状態に合わせて選択されます。
抗がん剤を使用してがんを小さくする治療です。手術や放射線治療の効果を高めるために、これらの治療の前に行われる場合や、手術の後に再発や転移を予防する目的で行われる場合があります。
また、がんがほかの臓器に遠隔転移している場合は手術や放射線療法が難しいため、一般的には薬物療法が治療の中心となります。
咽頭がんの治療を行った場合は、さまざまな副作用や後遺症が現れることがあります。場合によっては、会話や食事など日常生活をするうえで必要な機能に影響を及ぼすこともあります。後遺症の内容や程度は患者によって異なりますが、一般的には以下のものがあります。
手術によって声帯や舌などの発声や発音に関わる組織を切除した場合は、これらの機能に影響を及ぼすことがあります。機能の損失を最小限に済ませるために、体内のほかの臓器の組織を用いた“再建手術”を行ったり、リハビリテーションにより“代用音声(食道や器具などを用いて発声すること)”の獲得を目指したりします。
また、放射線療法を行うことで口が乾きやすくなり、声がかれやすくなることもあります。
手術によって舌、食道、顎などを切除した場合、食べ物を噛めなくなったり、飲み込みづらくなったりします。一般的には“再建手術”を行い、機能の回復を目指します。
また、放射線療法の副作用で喉や食道の粘膜が荒れることで、食事が取りづらくなったり、味覚が低下したりすることがあります。
上記のほか、手術の後遺症や放射線療法、薬物療法の副作用が現れることがあります。治療を終了すると改善するものもありますが、なかには治療後も継続して見られるものや、治療終了後数年経ってから現れるものもあります。
これらの症状が見られた場合でも、リハビリテーションや症状に対する治療により改善が期待できる場合もありますが、永久に回復が難しい場合もあり、医師と相談しながら治療を行います。
咽頭がんは初期の段階で治療を始めれば生存率も高く、機能の温存も期待できます。咽頭がんの治療はがんの根治だけでなく機能の温存も重要な要素となることから、よりよい治療ができるよう、まずは医師に相談し、自分自身の状態を知ることが大切です。
埼玉県立がんセンター 頭頸部外科 科長兼部長
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